図で理解する

電気主任技術者

外力を加えた場合のコイルの諸量変化

2021年4月7日

問題

 図のようなコイルがあり、鉄心が完全に挿入された状態から \( x \) だけ引き出された時の自己インダクタンスを \( L(x) \) とする。ただし、鉄心の渦電流、磁気飽和やヒステリシスは無視できるものとする。また、コイルの電気抵抗は無視でき、コイルに流れる電流は電気抵抗によって減衰しないものとする。

 鉄心の最初の位置は \( x=0 \) であり、コイルは短絡されて電流 \( i = I \) が流れ続けているものとする。このとき、コイルに鎖交する磁束数は \( \fbox {  (1)  } \) で、コイルが蓄えているエネルギーは \( \fbox {  (2)  } \) である。

 次に、コイルを短絡したまま,、外力を加えて鉄心を \( x \) まで引き出した。このとき、コイルに鎖交する磁束数は \( \fbox {  (1)  } \) のまま変わらないため、電流 \( i \) は \( \fbox {  (3)  } \) となり、コイルが蓄えているエネルギーは \( \fbox {  (4)  } \) に変化する。また、外力がした 仕事は \( \fbox {  (5)  } \) 。 

解答

(1)初期状態でコイルに鎖交する磁束数

 鎖交磁束数を \( Φ \) とすると、\( Φ=LI \) の関係があります。そのため、\( x=0\) での鎖交磁束数は、

$$ Φ=L(0)I $$

となります。

(2)初期状態でコイルに蓄えられるエネルギー

 エネルギーを \(W\) とすると、 \( W= \frac{1}{2} L i^2 \) の関係があります。そのため、\( x=0\) での鎖交磁束数は、

$$ W= \frac{1}{2} L(0) I^2 $$

となります。

(3)外力を加えたときの電流

 鉄心を引き抜くとエアギャップと鉄心の直列接続として考えられるためインダクタンスが減少します。それにより磁束も減少しますが、電磁誘導によって磁束の変化が妨げられる(補われる)ので、コイルに鎖交する磁束数 \(Φ\) が \( x=0\) と 外力を加えたときで変わりません。

そのため外力を加えた時の電流 \( i \) を \( i = I_外\) とすると、

\begin{eqnarray}
L(0) I &=& L(x) I_外 \\[3px]
I_外 &=& \frac{ L(0) }{ L(x) } I
\end{eqnarray}

と求められます。

(4)外力を加えたときのコイルに蓄えられるエネルギー

 インダクタンス \(L(x)\) 、電流 \( i = \frac{ L(0) }{ L(x) } I \) なので、 \( W= \frac{1}{2} L i^2 \) より、

\begin{eqnarray}
W &=& \frac{1}{2} L(x) \left \{ \frac{ L(0) }{ L(x) } I \right \} ^2 \\[3px]
&=& \frac{1}{2} \frac{ L(0)^2 }{ L(x) } I^2
\end{eqnarray}

となります。

(5)外力がした仕事

 題意より、鉄心の渦電流、磁気飽和、ヒステリシス、コイルの電気抵抗は無視できます。そのため、エネルギー保存則において熱エネルギーによる損失がない理想状態となります。したがって、外力がした仕事はすべてコイルに蓄えられます。

インダクタンスの変化量

 (1)と(3)で外力の有無によってインダクタンスが変化しました。それらを物理モデルで計算してみます。問題の図はソレノイドコイルで表せるので、以下の式を使います。

$$ L=\frac{μSN^2}{l}=μSn^2l $$

\(μ\):芯材の透磁率 \(S\):コイルの断面積 \(N\):巻数 \(n\):単位長さあたりの巻数 \(l\):コイルの長さ

外力なしのインダクタンス

 外力がない場合のコイルは全て鉄心に巻かれています。そのため鉄心の透磁率を \(μ_i\) とするとインダクタンス \(L(0)\) は、

$$ L(0)=μ_iSn^2l $$

と表せます。

外力ありのインダクタンス

 外力がある場合のコイルは、長さ \(x\) の空芯と長さ \(l-x\) の鉄心に分けられます。上の図のように和動接続で表されるため合成インダクタンス\(L(x)\)は、

$$ L(x)=L_i+L_a+2M $$

となります。ここで \(M\) は2つのコイルの相互インダクタンスです。理想状態を考えるので漏れ磁束が発生せず \(M=1\) となりそうですが、相互インダクタンスは「あるコイルを貫く磁束が他のコイルによって発生している場合」に考慮されるものです。上の図の2つのコイルは図として分かれていますが実際は1つのコイルですので相互インダクタンスは考慮せず \(M=0\) として計算します。したがって空芯の透磁率を \(μ_a\) とするとインダクタンス \(L(x)\) は、

$$ L(x)=L_i+L_a=μ_iSn^2(l-x)+μ_aSn^2x $$

と表せます。鉄心と空芯の透磁率は \(μ_i>μ_a\) であることに注意すると、

\begin{eqnarray}
L(x) &=& μ_iSn^2(l-x)+μ_aSn^2x \\[3px]
&=& μ_iSn^2l-μ_iSn^2x+μ_aSn^2x \\[3px]
&=& L(0)+(μ_a-μ_i)Sn^2x
\end{eqnarray}

$$ L(x) < L(0) $$

となり、外力を加えた場合、自己インダクタンスが低くなることが分かります。